学科紹介

エネルギー・環境

石井 隆生教授の紹介

石井 隆生教授 いしい たかお (Takao ISHII)

研究テーマ

  • ・機能性酸化物の合成とその評価
  • ・酸化物単結晶育成とその評価
  • ・酸化物材料の状態図の作成

研究キーワード

・燃料電池 ・酸素イオン伝導体 ・ペロブスカイト型酸化物

研究概略

新たな機能を有する金属酸化物の合成とその特性を調べて、新材料の創製を行っています。
X線回折法を用いて元素の配列(結晶構造)を知るとともに、電気的特性を測定して、
その性質が結晶構造とどのように関連しているかを研究します。

詳細内容

機能性酸化物材料として固体中を酸素イオンが動く新たな酸化物の材料探索を行っています。X線回折法を用いて試料の結晶構造を調べ、それが電気的特性とどのように関係しているか研究しています。最近の成果としてBa2In2O5のInの一部を他の元素で置換することで対称性の高い酸素欠損ペロブスカイト型酸化物の合成に成功しました。ここ数年はInを希土類元素や重原子である Mo, Wといった元素で置き換えた試料を合成してそのイオン伝導特性を調べています。このような高いイオン伝導度を有する材料は酸素センサーや固体燃料電池の電解質材料としての応用が期待できます。

研究室の学生(H23)

研究室の学生(H23)

X線回折装置X線回折装置
試料の作成途中試料の作成途中

酸素イオン伝導体の材料探索

電気伝導が主としてイオンによって行われる固体をイオン伝導体という。結晶中をイオンが移動する方法として、空孔にイオンがhoppingしながら動き回る空孔機構がある。酸素空孔が結晶学的に等価な酸素イオン格子点に移動できる事がイオン伝導を支配する要素の1つであり、等価な格子点は対称性の高い物質で起こる可能性が高い。従って結晶学的に対称性の高い物質を合成することが高いイオン伝導度を有する新物質を探索するための1つの指針となる。

金属酸化物の中で対称性の高い物質の典型的なものはペロブスカイト型酸化物であり、
組成式はABO3で記述される。図1に「理想的な」ペロブスカイト型構造を示す。

図1. ABO3型ペロブスカイト型構造

図1. ABO3型ペロブスカイト型構造

単位格子は立方体となっており、イオン半径が酸素に近いA原子が格子のかどを占め、半径の小さいB原子が対心、O原子は面心に配置されている。そして、各々をAサイト、Bサイト、Cサイトと呼ぶ。更に、この構造はイオン半径の大きなA原子とO原子が立方最密構造をとっており、イオン半径の小さなB原子は酸素八面体の隙間に位置している。従ってイオン半径の大きなアルカリ金属、またはアルカリ土類金属はAサイト、イオン半径の小さな遷移金属イオンなどはBサイトに入る。Aイオン、Bイオンの組合せによって非常に多くのペロブスカイト型酸化物ができる。

ABO3では酸素欠陥は無いのでイオン伝導は起こらないが、AイオンとBイオンの適当な組合せをするとABO3-δで表わされる酸素欠陥型ペロブスカイト型構造をとることがある。このδが比較的大きなものとしてブラウンミラライト型の結晶構造があり、その組成式はA2B2O5(ABO2.5)で表わされ、代表的な物質としてCa2Fe2O5が知られている。このような視点からGoodenoughらはこの結晶構造に着目し、Ba2In2O5の合成及びイオン伝導度特性を報告した。920℃付近に一次相転移に伴うイオン伝導度にとびを示すが、高温側で相当高いイオン伝導度を示すことが初めて報告された。

当研究では母体物質としてブラウンミラライト型結晶構造を有するBa2In2O5に注目してInのサイトを他の金属イオンで置換することにより、相転移のない酸素欠陥を有するペロブスカイト型酸素イオン伝導体を合成すること目的に、その結晶構造とイオン伝導特性の相関を検討している。

図2. ブラウンミラライト型構造A2B2O5

図2. ブラウンミラライト型構造A2B2O5

Ba2In2O5でInのサイトを他の金属イオンで置換すると結晶構造が立方晶系になりますが、その推測される結晶構造は下の図のようになります。

図3.

酸素8面体が3次元的に連なった構造ですが赤いは酸素欠損となっています。Inは3価ですから3価に金属イオンで置き換えた時、欠損量は変化しません。しかし3価以外の元素で置き換えるとこの酸素欠損量を制御できます。実験結果は上記の構造では酸素欠損量が過剰の状態であることがわかってきました。(22~23年度の成果)
またこれとは別に酸素イオンが自由に動ける空間をunit cell free volumeという量で評価すると、イオン伝導度の組成依存性はこの量と強い相関関係があることがわかってきました。

このように試料のイオン伝導特性を結晶化学の立場から検討することで良好なペロブスカイト型構造の酸素イオン伝導体を合成するための指針を探っています。